
「永遠の都ローマ展」開催を記念して、カピトリーノ美術館を見学した時の様子をレポします。
カンピドーリオ広場
カンピドーリオ広場にやってきました。

カピトリーノの丘は古代ローマの時代には神殿が置かれ、ローマの中心でした。古代ローマには七つの丘があって、その中でも重要な丘みたいですね。英語のキャピトルの語源になったとか。ローマ帝国の衰亡と共に廃墟と化しましたが、中世以降に復興。そして現在の広場は、ローマ法王パウロ三世の命を受けて、ミケランジェロによって設計されました。
カストルとポルックスの双子神の巨像
緩やかな階段を上がっていくと、広場の入り口には双子神の巨像があります。

ゼウスが白鳥に化けて、レダという娘と交わって生まれた双子の兄弟。ゼウスによって最後は双子座の星座とされました。

広場の正面にはローマ市庁舎がそびえます。古代の建物を市庁舎として、12世紀以来使い続けています。現存世界最古の市庁舎です。

マルクス・アウレリウス帝の騎馬像(複製)
広場の中央にはマルクス・アウレリウス帝の騎馬像のレプリカです。台座はミケランジェロによるものです。

もともとオリジナルをここに置いていたのですが、大気汚染のため美術館内に移動しました。

カピトリーノ美術館
市庁舎を正面に、広場の左右にカピトリーノ美術館があります。市庁舎に向かって右側が旧館(コンセルヴァトーリ宮)で、こちらが入り口になります。ここでチケットも買えます。けっこう入場料が高いから、ローマパスを使う時には、ここを初回の美術館として選ぶといいかも(ローマパスでは初回美術館無料。2館目以降は割引)

マルクス・アウレリウス帝の騎馬像の本物も、カピトリーノ美術館にあります。カピトリーノ美術館に入館してみたいと思います。



コンセルヴァトーリ宮博物館
旧館2階(イタリアでは1F)はコンセルヴァトーリ宮博物館といって、彫刻などの展示があります。ここはグレート・ホールという最も大きなホールです。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ「教皇ウルバヌス八世の像」

17世紀の教皇で、この像はベルニーニとその弟子の作品です。
アレッサンドロ・アルガルディ「教皇インノケンティウス十世の像」
アルガルディは、バロック時代にベルニーニのライバルとなった大彫刻家です。

ここはお隣のキャプテンの部屋です。

カピトリーノの雌狼

有名なローマ建国神話が題材ですね。雌オオカミに育てられた双子の兄弟ロムルスとレムスが、ローマを建国したという伝説から。

これらは15世紀のブロンズ像です。かつては狼像は紀元前6〜5世紀に作られ、赤子が15世紀に付け加えられた、という説が定説でした。

「雌狼に育てられる子」はローマのシンボルマークになっており、街を飾る装飾、ローマ市警のマーク、サッカーチーム「ASローマ」のマークなど、あらゆるものに使われています。

「エフェソスのアルテミスの像」
紀元前2世紀のもののローマン・コピーらしいです。たくさんの乳房は豊穣のしるしです。


ここは美しい礼拝堂です。正面の絵はマルチェッロ・ヴェヌスティ「Madonna in gloria con i SS. Pietro e Paolo」です。


美しい天井装飾はミケーレ・アルベルティ、Jacopo Rocchettiの手によるもの。

↓17世紀のイタリアの画家による「聖エウスタキウス」らしい。

「エスクイリーノのヴィーナス像」
これは必見の作品です。カピトリーノの至宝の一つです。

紀元前1世紀頃の作品で、モデルはクレオパトラじゃないかという説もあります。

Net flixのドラマで、「クレオパトラを黒人女優に演じさせた」らしいですね。まったくポリコレもいい加減にしたらいい。馬鹿げている。クレオパトラはプトレマイオス朝の女王、ギリシャ人じゃないですか!



「ヘラクレスの化身としてのコンモドゥスの胸像」
マルクス・アウレリス帝の実子で、帝位継承後は暴君となったコンモドゥス帝です。在位180年〜192年です。周囲の要人を粛清し尽くした後は、あまり政治に関心を示さぬようになって剣術に没頭。自らを「ヘラクレスの化身」として、本当に狼の毛皮を身に纏うようになります。闘技場でも腕前を奮い、民衆には大変人気がありました。

しかしコンモドゥスは元老院と対立し、最後は暗殺されてしまいます。
「トリトンまたはケンタウロスのトルソー」
左右二体、コンモドゥスに従います。


「ディオニュソスのトルソー」

戦車の上で横たわっている姿を描いているのではないかとおもわれます。


自然光が採光される「マルクス・アウレリウスのエセドラ」という空間です。(16室)

「ブロンズ製のコンスタンティヌス大帝の頭部」
すごい大きさと迫力でした。

4世紀の作品です。324年、コンスタンティヌス一世は多くの僭帝が乱立して内乱状態にあったローマ帝国を再統一。そして帝国の首都をローマからビザンティウムに遷都し、自らの名前に因んだコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)に改称しました。

また「ミラノ勅令」によって、初めてキリスト教を公認して世界の歴史を大転換させました。その功績の大きさから、彼は帝国史上唯一「大帝」と呼ばれることになります。

「マルクス・アウレリウスの騎馬像」
その名の通り、広場にあった「マルクス・アウレリウスの騎馬像」の本物があります。

マルクス・アウレリウス・アントニヌスはローマ五賢帝の一人。在位161年〜180年です。ストア派哲学に深く影響され、敬虔で禁欲的な皇帝でした。生涯学問を好み、「哲人皇帝」と呼ばれました。日本で言えば徳川綱吉かな?

その治世は決して穏やかなものでなく、パルティアやゲルマンどもとの戦争に明け暮れ、感染症の蔓延にも苦しみました。そして戦争中にあっさり病没してしまいます。

彼は日々の悩みや考えを書き溜めた備忘録を残しており、それは後世「自省録」として世界中で読み継がれることになります。

「馬を攻撃するライオンの像」

これもすごい迫力です。ミケランジェロの弟子らによって、ライオンの後ろ足、馬の頭部や脚、尾が付け加えられています。


「女性の像」
紀元前4世紀にアテネの彫刻家ケフィソドトスによって造られた「アルテミス像」のコピーと考えられています。

「カリュドーンの猪狩りの石棺」

女神アルテミスによって放たれた巨大な猪を、ギリシャの勇士たちが退治するシーンのレリーフです。

「アマゾンの頭部」
オリジナルは紀元前440〜430年ごろ、小アジア(トルコ)のエフェソスで行われた「芸術コンテスト」のためにブロンズで鋳造されたものらしい。


「踊るマイナス(女性信者)」
マイナスとは、バッカス神を称え、狂乱状態で躍りまくる女性信者の像のようです。現代語のマニアの語源になった言葉だとか。紀元前407年ごろ、エウリピデスによって書かれた悲劇「バッコスの信女」によるものだそうです。

「戦車の御者の像」

馬と御者は19世紀に別々の場所で発掘されたものを組み合わせたみたいです。


「Herm of a Caryatid」

カリアティードとは古代ギリシャに始まる柱の装飾です。女性の立像が柱の役目を果たします。

「戦うヘラクレス」

紀元前4世紀後半の彫刻のローマンコピーのようです。

「ヒュギエイアの像」

ヒュギエイアはギリシャ神話の健康の神様です。オリジナルは紀元前290年のギリシャ彫刻のようです。

「エロスまたはタナトスの像」


「ヘラクレス像」

紀元前2世紀のブロンズ像です。これもカピトリーノを代表する作品です。

この像の背後は古代ローマ神殿の基礎部分です。


屋上テラスからはローマの街並みが展望できます。




カフェもあるので一休みもできます。


カピトリーノ絵画館
引き続いて3階です。3階は16〜18世紀の絵画を中心に展示されています。「カピトリーノ絵画館」と言われます。
ポンぺオ・バトーニ「聖家族」

1760年ごろの作品です。

アンソニー・ヴァン・ダイク「彫刻家たち」
1627年から1629年ごろの作品です。

ディエゴ・ヴェラスケス「自画像」
1649年から1651年ごろの作品です。


大きな部屋に入ってきました。

ドメニキーノ「クーマのシビッラ」

フランチェスコ・アルバーニ「聖母子と二天使」

カラヴァッジョ「女占い師」
1596年ごろの作品です。ルーヴルにも同じテーマの作品がありますね。こすい女にいいところの坊やが手玉に取られるというテーマです。

グエルチーノ「埋葬され天に昇る聖ペトラニア」

この部屋の中央正面にある大作です。

グイド・レーニ「聖セバスティアーノ」

三島由紀夫の「仮面の告白」で描写された作品です。聖セバスティアーノは3世紀末、ディオクレティアヌス帝によるキリスト教弾圧のなかで殉教し、聖人となりました。

グイド・レーニ「悔悛のマグダラのマリア」

グイド・レーニ「クレオパトラ」

グイド・レーニ「ルクレツィア」

ガロファロ「受胎告知」
1528年の作品です。

ドメニコ・ティントレット「悔悛するマグダラのマリア」

ドメニコ・ティントレット「鞭打ち」
1590年の作品です。

タブラリウム
次は新宮(パラッツォ・ヌオーヴォ)に移動していきたいと思います。旧館から新館に移動するには地下通路を使います。タブラリウムとは古代ローマの公文書館のことらしいですね。紀元前78年につくられたそうです。


市庁舎タブラリウムのテラスから「フォロ・ロマーノ」が一望できます。

セヴェルスの凱旋門が見えます。




こっちはサトゥルヌスの神殿かな。

これは絶景ですね。


新宮(パラッツォ・ヌオーヴォ)
「マルフォーリオ(物言う像)」
中庭にある像です。

政府に対する庶民の告発文がこの像に貼られていたらしい。

日本で言えば落書の批判?または目安箱みたいなもんでしょうか?

「Satiro Della Valle」

サテュロスの像が二体並んでいます。

「ミネルヴァ像」
紀元前2世紀の作品。この像はかつては市庁舎前階段中央に置かれていたそうです。


新宮には古代彫刻がいっぱい展示されています。

「カピトリーニのアンティノウス」
ティヴォリのハドリアヌス帝の別荘から発掘。アンティノウスはハドリアヌス帝の愛人でした。


「休息するサテュロス」
古代ギリシャの彫刻家プラクシテレスがオリジナルとされますが、コピーの中ではカピトリーノのものが最も有名なものらしいです。

「瀕死のガリア人」

紀元前3世紀頃のローマン・コピーですね。ガリアとは現在のフランス。

これもカピトリーノを代表する作品の一つです。

「傷ついたアマゾンの像」



「Faun in rouge antique marble」
2世紀の作品らしい。ハドリアヌスの別荘から出土。

「狩人の像」
紀元3世紀半ばごろの作品です。


「Statue of Pothos restored as Apollo Citharoedus」
紀元前4世紀の古代ギリシャ彫刻家スコパス作の「ポトス像」がオリジナル。それをキタラというハープを弾くアポロの像として魔改造したものです。










「カピトリーノのヴィーナス」

これも至宝の一つ。この恥じらうヴィーナスだけで、一室が与えられています。

ギリシアのプラクシテレスの「クニドスのアフロディテ」の模刻らしいです。

紀元前2世紀の模刻で、発見されたのは17世紀です。どの構図から見ても美しい作品です。



「Torso of Discobolus restored as wounded warrior」
古代ギリシャの彫刻家ミュロンの円盤投げを元にしたトルソーが、オリジナルの部分です。それを元に17世紀後半から18世紀のフランス人彫刻家ピエール=エティエンヌ・モンノーが修復しました。

「Statue of Hercules restored as killing the Hydra of Lerna」

17世紀にアレッサンドロ・アルガルディによって修復されたものらしいです。

「鳩のモザイク」

ハドリアヌス帝の別荘、ヴィッラ・アドリアーノにあったそうです。2世紀の作品です。

「劇場用マスクのモザイク」
もう一つありました。これも2世紀の作品です。



「ピュロスとしても知られるマルスの巨像」
紀元1世紀後半の作品。ピュロスは古代エジプトのエピロス王で、戦の達人として知られるそうです。

「アキレスの生涯を描いた石棺」
紀元3世紀の制作だそうです。

古代彫刻からバロック絵画までさんざん堪能しました。翌日またこの前を通りかかったんですが、何かデモをやってました。

市庁舎への抗議活動かな。

よくわからんが、とにかくがんばれ。

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